東京高裁 国・建材メーカーを断罪(声明)

声    明

2017年10月27日

首都圏建設アスベスト訴訟原告団

首都圏建設アスベスト訴訟弁護団

首都圏建設アスベスト訴訟統一本部

1 判決の結論

建築現場における作業を通じて石綿粉じんに曝露し、中皮腫や肺ガンなどの石綿関連疾患を発症した被災者及びその遺族が、国と石綿含有建材製造企業(以下、「建材メーカー」という。)を訴えていた建設アスベスト訴訟において、東京高等裁判所第5民事部(永野厚郞裁判長)は、2017年10月27日、国及び建材メーカー4社に対し、総額3億7232万5042円の支払いを命じる判決を言い渡した。

本判決は、国と建材メーカーに対する請求を全て棄却した2012年5月25日の横浜地裁判決を覆し、建設アスベスト訴訟では、高等裁判所として初めて国と建材メーカーの双方に損害賠償を命じるものである。

国の国家賠償法上の損害賠償責任は、既に6つの地裁判決で認められているが、本判決によって、国の責任を認める司法判断は完全に定着するに至ったところである。また、建材メーカーの損害賠償責任では、民法の共同不法行為の解釈及び適用をめぐり、各地裁で様々な判断が示されていたが、本判決において東京高裁が示した判断枠組みは、全国各地で争われている建設アスベスト訴訟の趨勢に大きな影響を与えるものである。

 

2 国の責任

(1)労働関係法令に基づく規制権限不行使の違法性について

判決は、1960年代の時点で、石綿粉じんに曝露することで、石綿肺を発症することについての医学的知見は1958年3月頃には確立していたこと、肺がん及び中皮腫を発症することについての医学的知見は1972年頃には確立していたことを認定した。また、1978年当時には、少量の石綿暴露によっても肺がんや中皮腫を発症しうるとの医学的知見が形成されつつあったとした。

その上で、泉南アスベスト国賠訴訟最高裁判決において示された、労働者の生命や健康を保護するための労働関係法令に基づく規制権限は「適時にかつ適切に」行使されなくてはならないとの法理に則り、国の労働関係法令に基づく規制権限の不行使について、次の点に違法性を認めた。

すなわち、遅くとも1981年1月1日の時点で、事業主に対し、その雇用する労働者を石綿含有建材を切断する等の作業に従事させるに際し、労働者に防じんマスクを着用させることを罰則をもって義務付けるとともに、これを担保するため、通達を定めて、石綿粉じん暴露の危険性及び防じんマスクの使用の必要性に関して、石綿含有建材の表示内容及び石綿含有建材を取り扱う作業場における掲示内容並びに安全教育の内容を改めなかったのは違法であるとした。

 

(2)一人親方・事業主に対する責任について

判決は、労働関係法令に基づく国の規制権限不行使について違法性が認められる場合においても、労働関係法令が保護の対象としているのは労働者のみであるとしたが、「労働者」に該当するか否かは、「必ずしも労務提供の法形式にとらわれることなく、指揮監督下の労働という労務提供の形態及び法主の労務に対する対償性の実質から見た使用従属関係に着目して判断されるべき」とした。そして、原告らのうち、労働者性に争いのある者について、必要な限度で個別具体的な検討をおこない、7名について実質的な労働者性を認めた。

もっとも、判決は、建材メーカーの責任を認めることで、「労働者」に該当しない一人親方等を14名救済した。これは、本判決の重要な意義である。

 

(3)損害賠償額、減額要素

判決は、各被災者に生じた損害に応じて、石綿関連疾患による死亡の場合は2500万円、中皮腫、肺ガン、びまん性胸膜肥厚及び石綿肺で管理区分4の場合は2200万円、石綿肺で管理区分3の場合は1800万円、石綿肺で管理区分2の場合には1300万円の慰謝料を認めた。

その上で、国の責任は補充責任であることを理由として、各被災者について認められた慰謝料の額から3分の1に減額し、国の責任期間と各被災者ごとの石綿粉じん暴露期間との関係に応じて一定の減額を行い、判決別紙記載の金額の賠償を国に命じた。

 

3 建材メーカーらの責任

判決は、建材メーカーらの警告義務について、1975年4月1日以降,製品の安全性確保義務の一態様として,石綿粉じんばく露により石綿関連疾患を発症する危険があること及び危険回避のために当該建材を取り扱う作業中は防じんマスクを使用する必要があることなどを警告する義務を負担する、として建材メーカーらの警告義務を認めた。

そして、判決は、建材メーカーらの責任について、マーケットシェア、従事した現場数、供述証拠などに基づき、中皮腫を発症した原告との間では、719条1項後段の適用により、石綿肺、肺がん、びまん性胸膜肥厚を発症させた原告との間では、民法709条に基づく割合的な損害賠償責任を認めた。

 

4 本判決の意義と私たちの求めるもの

本判決は、これまでの6つの地裁段階の判決と異なり、初の高裁段階の判決であるとともに、同種事件が係属する全国6つの高裁の先陣をきっての判決であって、世論、政治に訴える力は極めて大きい。言うまでもなく、今後の5つの高裁、とりわけ来年夏頃までに予想される東京高裁10民・大阪高裁3民、同4民の判決に多大な影響を与えるものとなるのであって、仮に、国や建材メーカーらが本判決に対して上告を行ったとしても、本判決が示した判断が最高裁の審理、判断をリードするものとなる。

したがって、東京地裁判決から数えて7連敗となった国は言うに及ばず、京都地裁判決、そして、今月24日の横浜地裁判決に続いて、3たび加害責任を断罪され、賠償義務を認められた。重大な判断を突きつけられた建材メーカーらも、こうした重要な意義を有する判決として本判決を真摯に受けとめ、建設アスベスト訴訟の早期全面解決に真正面から向き合うことが厳しく求められている。

この点、まず国は、判決で断罪された加害責任はもちろんのこと、5度にわたる地裁判決に従わず解決を引きのばしてきた責任につき猛省し、本判決を機に、全面解決を図る立場に立ち、原告ら被害者に対する謝罪と建設作業従事者に対する被害補償基金制度創設、そして、今後の被害防止対策についての協議を内容とする基本合意締結を決断すべきである。

一方、建材メーカーらは、本判決を真正面から受け止め、早期全面解決の立場に立ち、直ちに、国における基金制度創設に同意し、さらにはこれを国に積極的に働きかけるべきである。

私たちは、本裁判の被災者75名中、既に56名が無念のうちに命を奪われているという余りにも重い現実に思いを致し、本判決を踏まえて、一日も早い全面解決を実現すべく、全力で奮闘する決意である。

以上

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